72を切りたい!ゴルフを愛するアマチュア中年オヤジの「ゴルフ本」レビュー

~ゴルフレッスン本の感想、ゴルフあれこれ、その他いろいろ。気の向くままに~

桑田泉プロ

桑田泉プロ <A系 オススメ度:★★★

①「クォーター理論」ゴルフ (著者:桑田泉 成美堂出版 2012年)

②「深・クォーター理論」ゴルフ 実践編(著者:桑田泉 成美堂出版 2012年)

③0からやり直す本当のゴルフの教科書(著者:桑田泉 マイナビ出版 2012年)

④桑田泉ゴルフやり直しのススメ(日本文芸社 2017年)

 

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 PGAティーチングプロA級、2010年PGA最優秀ティーチングプロに輝いた実績のある先生です。野球ファンには「あの桑田真澄投手(元巨人・パイレーツ)の弟さん」としても有名です。青山学院大学卒業後、ゴルフに転向され、その独特の語り口(もはや「毒舌」レベル?)と鋭い視点で、わかりやすいレッスンを展開されている人気の先生です。

 

 実兄の真澄氏と同じくPL学園(大阪)野球部のご出身で、1987年(昭和62年)の甲子園春夏連覇のメンバーであり、その後も青山学院大に進学され、野球部でご活躍されました。PL学園の同期には、後にプロ野球で活躍した野村弘樹氏(元大洋・横浜)、橋本清氏(元巨人)、立浪和義氏(元中日)、片岡篤史氏(元日ハム・阪神)といった錚々たる方々がいらっしゃいます。野球ではどうしても真澄氏の陰に隠れてしまいがちと思いますが、マチュア野球界でも屈指のトップエリートの一人です。

 正直、ゴルフ大好き人間である以前に大の野球ファンである私としては、「プロゴルファー・桑田泉」さんの本だからというより、「PL学園の桑田泉さん」の本だからということで、初めは手に取りました。

 

PGA最優秀ティーチングプロが考案した 「クォーター理論」ゴルフ

PGA最優秀ティーチングプロの「深・クォーター理論」ゴルフ 実践編

 さて、先生のお名前の右隣に、私なりの区分を示す<A系>という表記があるのを見て「あれ?」と思われた方もいらっしゃるかも知れません(そう思われたあなた、相当な「レッスン本マニア」では?)。

 

 なぜなら、桑田先生の指導の随所に「手打ちしろ!」という過激な(?)言葉がバンバン出てくるからです。「タメなんか作るな!アマの飛ばしは「手打ち」だ!!」(①、14ページ~)「黙っていても体は動く!とにかく手でヘッドを振れ!」(①、24ページ~)という表現が「これでもか、これでもか!」と連発されるので、「なーんだ、やっぱりゴルフって手でバンバン叩いていけばいいんだ」と思う方も多いと思います。実際、桑田先生も、あえて意図的に「身体の動きなんてどうでもいい、とにかくガンガンに腕と手を動かして行け!」というニュアンスを強調されていると思うんです。

 

 しかし、先生の本を「文字通りに」受け止めると、先生が本当におっしゃりたいことを見逃し、逆にゴルフの迷路に入り込んでしまうのかな・・・と思います。

 

 確かに、先生は「(近頃よく言われる)『ボディーターン』なんかどうでもいい、ガンガン手も腕も使って、ボールをヒットせよ」と強調されているようにも読めてしまう部分もあると思うのですが、私はそれは一面的と言いますか、表面的なものだと思うのです。

 

 桑田先生が私たちのようなアベレージゴルファーに伝えようとしているのは「ゴルフというのは身体、しかも全身を使ってプレーする、とても厳しいものだよ。だけど最近のレッスンは、身体の使い方ばっかりで、手や腕を使うことが悪いことであるかのような表現ばかりだ、人間には手、腕があるんだよ、それを使わないで、どうやってゴルフボールが打てるって言うんだよ」ということなのではないかと・・・私なりに推測しているわけです(外れていたら、ごめんなさい)。

 

 先生はゴルフのスイングを「S1」「S2」「S3」(“S”というのは“swing”の略称のことで、数字はその要素のことです)という3つの要素に分けて説明されていますが、「手でクラブを上げなさい」とおっしゃっているところはないのです。

 

 詳細はこれから先生の本をお読みになる方々のお楽しみということで、あえて触れないでおきますが、最初の「S1」は小さな振り幅ですが、「上体だけのターンで打つ」と説明されています(上体の動き、①86ページ)。次の「S2」では、「『背中』で上げ、『足』で戻す」とあります(下半身の動き、①92ページ)。ですから最初の2つの要素「S1」「S2」では、あくまで上体や下半身という大きなパーツを動かすことに大きな意識があり、手や腕を使う意識は希薄です。「S1」と「S2」の動きによってクラブはアドレスからほぼトップの位置まで上がるので、いわゆる「テークバック」について、先生は一切「手で上げればいーんだよ」ということはおっしゃっていないわけです。

 

 ただ、トップからいよいよボールを打つ段階の「S3」になると、突然手や腕を使う意識が全面的に前に出てきます。ここでのキーワードは「アームローテーション」「ヘッドターン」。「S1」「S2」でトップに持ってきたら、そこから迷わず腕を思い切り振り、手を返してボールをヒットする感じでしょうか。とにかくトップまでは上体と下半身の動きでクラブを上げて行って、トップからは思い切りよく腕と手を先行させるわけです。

 

 私が思うに、桑田先生の真骨頂は「S3」にあるのではないでしょうか。トップからの切り返しを、腕の動きからスタートさせてよい、ということなのでしょう。多くの本が、トップからの切り返しの動きを「下半身でスタートさせる」旨を述べているところ、桑田先生は「手や腕をもっと意識していいんだよ、巷で流行ってる『ボディーターン』っていうのは、絶対必要な動きなんだけど、ゴルフを簡単にするために、ひとまず忘れていいんだよ」ということを伝えて下さっているのではないかと思うのです。

 

 「アームローテーション」「フェースターン」というキーワードは、中井学先生も強調されています。私は中井先生の本を読んだ後で桑田先生の本を読みましたので、両先生には共通するところが多いと思いました。

 

0からやり直す 本当のゴルフの教科書 ~常識をくつがえす 桑田 泉のクォーター理論~

 先生の理論を学ばれるなら、上記①~④のうち、③をお読みになるのがいいと思います。①②も面白いのですが、あまりにも強烈に「手打ち」の面が強調されているために、逆に先生の意図がぼやけてしまっているように感じるのですが、③はそのような面が少ないです。①②も素晴らしい本ですが、「読者へ強い印象を与えること」が前面に出すぎてしまっている感もあり、その点③は桑田先生が伝えようとしているゴルフが、本当に大切なところから順序立てて、かつ、ある程度抑制が効いたバランスの良い状態で提供されているように思います。また、先生が「手打ち」を強調されることの真意も、③では明確に記述されています(76ページ~77ページ)。

 

桑田泉ゴルフ やり直しのススメ: マンガで楽しくよく解かる! (にちぶんMOOK)

 ④は漫画形式で、おそらく「単発モノ」として発売されていたものと思いますので、今でも手に入るかどうかはわかりません。私は深夜に近所のコンビニに缶ビールを買いに行った際に、偶然目にして買ってきました。漫画形式だけに読みやすく、内容的にも面白かったです。主人公が「いかにも」という感じのさえない中年のオッサンで、その奥さんが元ゴルフ部出身の美人さんという、いかにも漫画的な設定も面白かったですし(笑)

 

 上記のほかにも、桑田先生の著書はたくさんあるようです。私の考えでは、「A系」を目指す方が、中井学プロや谷将貴プロの本を読まれた後に読む方が、桑田先生の「真意」をより理解しやすいのではないかと思います。