イ・ボミ プロ
イ・ボミ プロ <A系> オススメ度:★★
①ゴルフ賞金女王 イ・ボミのおしえ (著者:イ・ボミ 主婦の友社 2016年)
2011年から日本女子ツアー参戦、2015年、2016年と2年連続して賞金女王に輝いた、ご存知「スマイル・キャンディ」のイ・ボミさん。。2017年は調子が出ず、わずか1勝(CATレディース、2017年8月18日~20日)にとどまり、左肩を痛めているということで、2018年シーズンもまだ優勝がありません(2018年4月20日現在)。最近では同じ韓国勢のキム・ハヌルさんのご活躍の方が目立ってきていますが、なんといっても日本女子ツアー通算21勝(2018年4月20日現在)、2年連続の賞金女王に輝いた実績は折り紙付きで、まだまだ多くのギャラリーを引き連れる人気者。今後の復調に期待したいところです。
ゴルフ賞金女王 イ・ボミのおしえ (PERFECT GOLF)
本書は新書版で、軽い感じで読める本ですが、レッスン本としての内容もしっかりしていると思います。6つのChapterで構成されていますが、そのうち
Chapter1 イ・ボミ 女王のスイング
Chapter2 ボギーにしないボミ流アプローチ
Chapter3 イ・ボミ パットの約束
の3つのChapterでは、ボミさんのスイングがコンパクトに説明されています。ボミさんがどのようなポイントに注意しながらスイングされているかがよくわかります。
Chapter6 イ・ボミ連続写真集
では、ボミさんのスイングの連続写真が①ドライバーショット、②アイアンショット、③バンカーショット、④パッティングに分けて載せられており、ボミさんのシンプルで美しく、それでいてパワフルなスイングをよく理解することができます(ただね・・・ちゃんとしたスイングの連続写真なんだから、「イ・ボミのスウィング連続写真集」とかのタイトルにすればいいのに……なんとなく違う方向を思わせるタイトルは、疑問です)。
本書は「レッスン本」としては少し軽めで、気負わずに読めるところがいいと思います。ほかのレッスン本に比べると軽めですが、ドライバーショット、アプローチショット、バンカーショット、パッティングまで、一通りしっかりと説明されており、内容も充実しています。
なお、ボミさんは現役のツアープレーヤーであることから、本書は「レッスン本レビュー」というカテゴリーでご紹介するよりコラム記事でご紹介した方がよかったかな、とも思いましたが、スイングに関する説明がしっかりしていることから、レッスン本という位置づけとしました。
ただ、本書はむしろ、ボミさんの人間的な魅力を紹介している部分の方が面白いです。ボミさんに関わる方々の「証言」の数々の方が、レッスンよりも面白かったです。
特に印象的だったのは、関係者の方がボミさんのお人柄を語られているところで、ある場面を思い出して語られていたところです。
まだボミさんが日本の試合に参加して間もない頃、ある試合でボミさんと競っていた選手がピンチになるも、見事にリカバリーしてパーセーブした結果、ボミさんは優勝を逃してしまったという場面の思い出話で、その方が「あのとき、相手がミスしてくれたら勝てたのにね」という旨のことをボミさんに言ったところ、ボミさんは即答で、
「それは考えたこともない。一度だって相手が崩れたら、なんて考えたことはありません。」と言い切ったそうです。「相手の選手がいいショットを打ったら、自分もそんなショットを打てるように練習しなくちゃいけないと思います。そして、それ以上のショットが打てるようになりたいんです」(169~170ページ)。
これには……正直私は特にボミさんのファンというわけではないのですが、シビれました。なんか、すごいな、っていう。確か、フィギュアスケートの羽生結弦さんも、同じようなお話をされていたように思います。「相手が最高の演技をしたら、僕はさらにその上を行くだけだ」という趣旨のお話だったように思います。超一流の方々にとっては、まさに「戦う相手は自分自身」ということなのでしょうね。
その後、何かの試合をテレビ観戦しているときに、ボミさんが争っている相手が粘り強くバーディを重ねてボミさんに追いついた場面を観たのですが(ごめんなさい、いつの、どの試合だったかは忘れました)、優勝を争う相手がバーディで自分に追いつくパットを沈めた瞬間、ボミさんの表情にカメラがアップされたのですが、心から「すごーい!」という感じの笑顔で、小さく拍手を送っていたのです。「あー、この人は本当にそういう人なんだ」と思って、日頃の自分を恥じましたよ。私なら「外せー、外してくれぇー」なんて心の中で思っちゃいますから(苦笑)。
本書はコアなゴルフファンというよりは、ゴルフを始めたばかりのビギナーの方、特に女性のビギナーの方が読まれるには、わかりやすくて良いと思います。最初から堅苦しいレッスン本をお読みになるよりは、ゴルフが親しみやすくなるでしょう。あとは、単純にボミさんのファン向けですかね(笑)。正直、ファン向けという要素も多いと思います。
余談ですが、私は2016年の秋、「樋口久子三菱電機レディス」(武蔵丘GC)の最終日を観戦に行ったのですが、最終組がイ・ボミさん、キム・ハヌルさん、李知姫さんという組合せで、その最終18番ホールのギャラリー数は圧倒的でした。最終日最終組の上がりホールというだけでは説明できない人の数で(笑)。武蔵丘GCの18番が、ものすごい数のギャラリーに縁どられていて、「いやー、すごい人気だな、これは」と改めて思ったのを覚えています。