72を切りたい!ゴルフを愛するアマチュア中年オヤジの「ゴルフ本」レビュー

~ゴルフレッスン本の感想、ゴルフあれこれ、その他いろいろ。気の向くままに~

宍戸ヒルズカントリークラブ(西コース)

宍戸ヒルズカントリークラブ(西コース)

〒309-1725 茨城県笠間市南小泉1340
TEL 0296-77-2141

 

https://www.shishido.co.jp/shishido/

 

 私が34歳のときに「コースデビュー」を果たした、記念すべきゴルフコースです。

 

 当時勤めていた会社の、私が仕事の上で師匠と尊敬している先輩で、かつ絶対に逆らえない怖い先輩から「お前、ゴルフやれ」(「やろうぜ」、ではなく、「やれ」)と言われ、その先輩はその場でラウンドの予約を入れてしまったのです。

 

 ラウンドの日までほとんど残り時間はなく、私はあわててショップに行って初心者用のセットを買い、練習場に2、3回行って、5番アイアンというクラブを600球くらい打っただけで、いきなり宍戸ヒルズの西コース、1番(171y Par3)のティグラウンドに立たされることになりました。

 

 もちろん、西コースが「チャンピオンコース」であることなど、当時は知る由もありませんでした。

 

 もう前日から嫌で嫌で、たまりませんでした(笑)。あまりに嫌すぎて、結局ほとんど眠れないまま、カーナビに「ししどひるず」と入力して、高井戸から首都高4号線に乗り、C2、常磐道と走って、宍戸ヒルズにたどり着きました。

 

 ゴルフについて何も知らないわけですから、現地に着くと、なんか立派な建物(クラブハウス)の玄関前にクルマが並んでいたので、私も続いて停めて、「駐車場はどこかな、どこに停めればいいのかな?」なんて辺りをキョロキョロ見回していたら、なんか優しそうなおばさんたちがやってきて、コンコンと窓を叩かれ、窓を開けるとトランクを開けるように言われて、言われるままにトランクを開けると、買ったばかりのキャディバッグを持ち出されて。

 真面目な話「なんだなんだ、検問か?」(成田空港じゃないんだから笑)「俺の荷物、どこ行っちゃうんだ?」と、かなりビビりました。今考えると、自分でも大笑いです。

 

 クラブハウスに入ると「何、これ?ホテル?」「今日はここに泊まるのか?」とか思ってしまって、「どこでゴルフするんだろう」と不安になりました。

 

 フロントというものがあったので、そこに行っておそるおそる「あのー、私ですね、なんか今日ここでゴルフすることになってるみたいなんですけど」と、ものすごくトンチンカンなことを言うと、フロントの方は(内心、なんだこの人は?と思われたかもしれません)穏やかな笑顔で「こちらのご記入をお願いします」と細長い紙を差し出されたので、備え付けのボールペンで氏名、住所などを記入し手渡すと、「〇〇様とご一緒の、△△様ですね。ご予約承っております」と、なんか番号がついていて、なぜか一本のカギがチェーンでぶら下がっている手帳のようなものを手渡されました。

 

 「なんだろう、この手帳。何を書けというのだろう。でもページがないし、手帳じゃないのかなぁ」「これからどうすればいいんだ俺は」「とりあえず、なんだかスゴくヤバいところに来ちまったらしい」などと、ほとんど頭の中はパニックになって、フロント前のロビーを徘徊していた(34歳男性、幼稚園児状態)ところ、先に到着されていた先輩に無事「保護」され、ロッカールームに連行されました。

 

 そこで、「手帳」ではなくてフォルダというものであることを教えられ、その番号と同じロッカーを使うことを教えられ、着替えたら行くぞと言われ、あわてて着替えました。前日にユニクロでテキトーに買い揃えてきたウェアです。

 

 もう目に入る光景すべてが、初めてのものばかり。とにかく先輩について歩いていくと、カートというものがあり、そこに先ほど意味が分からないまま持ち去られた私のキャディバッグが積まれており、「おお、あった」とか思って安心したり。

 

 そして、私は西コース、1番(171y Par3)のティグラウンドに立たされたわけです。5番アイアンしか打ったことがないので、5番アイアンを持って、おそるおそるボールをティアップしました。とにかく怖かったので、サッサと終わらせたい一心で、パッと打ちました。

 ボールは真っすぐ飛んでいきました。たぶん2打目で乗せて、3打目パターを打って、「OK」(ワングリップどころではない長い距離)をいただいて、よくわからないままにボギースタートだったと思います。そこまでは、なんとなく覚えています。

 

 それ以降のことは、ほとんど何も覚えておりません。たぶん、5番アイアンとパターの2本だけで回ったんじゃないかなぁ……。

 真夏の太陽の下で、怖い先輩(心はすごく優しい方です)に怒られまくりながら、ただ走り回っていたという記憶があるだけです。

 先輩から「キャディさん、本当に申し訳ないのですが、今日はコイツの面倒だけ見てやっていただけますか。ご迷惑おかけして、本当にすみませんが」と伝えられていたキャディさんは、その日は私の専属(笑)。

 もうひたすら走り回って、疲れて苦しいだけで、昼食のレストランでも食事が喉を通りませんでした。何を注文したのかもよく覚えていません。疲れ果てていたので、冷たい蕎麦だったかな……

 

 午後もただ、灼熱の中を全力で走り回るだけ。一緒に走ってくださったキャディさんも大変だったろうに……。本当にご迷惑をおかけしたと思います。

 

 疲れてペースが落ちると、容赦なく先輩の怒鳴り声が聞こえてきます(あ、その先輩も他の組の方々に聞こえるほど大きな声を出していたわけではありませんよ。とてもマナーに厳しい方でしたので。念のため)。林の中、砂の中、池の中と、あらゆる場所にボールを打ち込みながら、ただひたすら、自分が打ったボールを追いかけ回す感じでした。自分が打ったボールを追いかけ回すって、もはやゴルフではない他の競技ですよね(笑)。

  

 それでも、私は「あー、なんか楽しいな、これはすごく、楽しいな」と思っていました。30℃を超える真夏の空の下で、怖い先輩に怒られながら、どこまでも緑色の世界を走り回って、「こんなの、高校野球以来だな」と思っていました。

 上級生にひたすら怒鳴られながら、真夏に朝から晩まで野球のグラウンドを駆け回っていた記憶がよみがえってきて、似たような充実感を味わえたことが、私にはすごく楽しかったです。自分が打ったボールを追いかけ回すというのが、最後の夏の大会で、終盤に力尽きたエースが連打され、ことごとく外野を抜かれ、走り回っていた外野手の私を思い出させました。

 真夏の濃い緑色が、遠い昔の野球場の記憶に重なったのでしょうね。

 

 ヘトヘトになって、帰りの常磐道に乗りました。首都高に入るまでは平たんな道ですから、何度か意識を失いかけ、かなり危なかったです。

 

 私の場合は、いきなり宍戸ヒルズに放り込まれ、散々な一日を送ったことで、逆にゴルフというスポーツの魅力に取りつかれることになったのでしょう。それまでまったく知らなかった新しい世界を知り、あまりにも大変な一日となったため、逆に「これは一生モノの価値があるかも知れない」と思ったのです。

 ショートコースや河川敷などを経由せず、いきなりチャンピオンコースに放り込んだ方が、こいつはやるだろうと、私の性格を先輩は見抜いておられたのだと思います。

 

 翌日、すぐに私は「ミズノゴルフスクール」に電話して、入会を申し込みました。それから、ゴルフとともに歩く素敵な日々が始まりました。仕事の調子も上がってきました。

 

 私をゴルフというかけがえのないものに出会わせてくださったその先輩とのラウンドは、今でもかなり緊張します(笑)。腕前は遠く及ばないままですが、なんとか普通にご一緒できるようにはなりました。毎回、楽しいラウンドをご一緒させていただいております。

 

 その先輩が私を宍戸ヒルズに連れて行ってくださらなかったら、今の私はありません。かつての仕事の上での師弟関係をこえて、私は今でもその先輩を尊敬し、感謝しています。

 

 おそらく一生忘れることのない、ある夏の一日でした。