72を切りたい!ゴルフを愛するアマチュア中年オヤジの「ゴルフ本」レビュー

~ゴルフレッスン本の感想、ゴルフあれこれ、その他いろいろ。気の向くままに~

ベン・ホーガン氏

ベン・ホーガン氏 <A系・M系> オススメ度:★★★

 

①ハンディ版モダン・ゴルフ(著:ベン・ホーガン 訳:塩谷紘 ベースボール・マガジン社 2006年)
②ベン・ホーガン パワー・ゴルフ(著:ベン・ホーガン 訳:前田俊一 筑摩書房 2012年)

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 ①はアメリカの伝説的プレーヤー、ベン・ホーガン先生の手による、世界中のあらゆるゴルファーに影響を与えたといわれる不朽の名著、伝説の1冊です。原著は1957年にアメリカで発刊されています(原題:Five Lessons: the Modern Fundamental of Golf by Ben Hogan)。

 

モダン・ゴルフ ハンディ版

 本書の特徴は、なんといっても文体の格調の高さです。前田俊一氏の日本語訳が素晴らしいというのもあるのでしょうが、まるで優れたアメリカ文学の日本語訳を読んでいるかのような、知的で優雅な気分になります。構成は、Lesson1「グリップ」、Lesson2「スタンスとアドレスの姿勢」、Lesson3「スウィングの前半」、Lesson4「スウィングの後半」、Lesson5「まとめと復習」となっています。


 しかし、本書のレッスン内容は、現代における私のようなアベレージゴルファーにはちょっと難しすぎるかな・・・というのが、正直な印象です。よく言われるように、1950年代のゴルフクラブやボールは、現代のものとは相当異なるもので、ウッドはパーシモン・ヘッド、アイアンはヒッコリー・シャフト、ボールは糸巻きという時代の理論ですから、いかに稀代の巨匠のおっしゃることでも今はちょっと・・・というところはあると思います。私ごときが言うのもなんですが・・・


 特にLesson4「スウィングの後半」では、トップから切り返し以降のダウンスウィングについて詳細な説明がなされていますが、これがものすごく難しいのです(いや、マジで)。例によってモノマネ好きの私は何度も練習場でモノマネを試みましたが、まったくできませんでした。「ダウンスイングは、腰を回すことから始まる」と説明されており、後は要約しますと「腰を回すことで、それにつられてトップに収まっていた腕が自然と下に降りてくる、そして、力の限りボールを叩く」ということが書かれています。これは現代でも「下半身リード」と言われるもので、とても重要な要素ですね。トップからの動きについて「上半身から打ちに行く」のではなく、「下半身から打ちに行く」ことの重要性を、おそらく世界で初めて明確に、一般に向けて主張されたのではないでしょうか。私ごときにも、トップから腰を回してダウンスイングを始めれば、それにつられて腕は自然と下に降りてくるというところまではなんとか理解できたのですが、そこからいきなり話が変わるかのように「力の限りボールを叩く」というのが、よくわかりませんでした。実際にやってみても、まったくできない(泣)。トップから腕と、特に右肩をその位置に置いたまま腰を回すと確かに自然と腕は下に降りて来ますが、そこからインパクト付近になって突然「力の限りボールを叩く」というのが謎すぎちゃったんですよね。最初「A系」だったのが、突然「M系」に切り替わる感じで、どうにも謎でした(今も謎のままです・・・)。前に私はゴルフを始めてから1度も空振りしたことはないと書きましたが、ホーガン先生のモノマネに挑戦したときだけは、何度か空振りしました。とにかく、まともにボールに当たりすらしなかったです。いえ、これは私が下手なだけで、ホーガン先生は悪くないんですけど(笑)


 また、本書は「いいとこ取り」が難しい本だと思うのです。ある部分を切り取って「この部分は自分に役立ちそうだから、やってみよう」というのが難しい。他の本だと、全部は理解できなくても、「この部分は自分に合いそうだからやってみよう」というように、いいとこ取りができるのが普通です。しかし、ホーガン先生のこの本は、それが難しい。なぜなら、Lesson1からLesson4までの内容を忠実に守る(誤解を恐れずにいえば、すべてを忠実に模倣する)ことが要求されているように思えるからです。実際、ホーガン先生も、Lesson4「ダウンスウィングの後半」の中で、切り返し直後の瞬間について「グリップをはじめとしておこなわなければならないゴルフの基本のすべては、実は、ゴルファーをこの位置につかせるために計算し尽くされたものなのである。これらの統合されたステップのどれか一つでも疎かにすれば、この位置を疑似体験することも、実行することも不可能になる」(101ページ)と述べています。うーん、厳しい先生だなあ(笑)

 マニアックな話で恐縮ですが、このホーガン先生のダウンスウィングについて、同じ時代に日本で一時代を築かれた伝説の名手、陳清波先生がその著書「陳清波の近代ゴルフ」(著・陳清波 報知新聞社 1961年)の中で、ホーガン先生のダウンスウィングについて、「ホーガンの”モダン・ゴルフ”が日本に輸入されてきた当時この感じがうまくつかめず、自分のスイングをすっかりおかしくし、ゴルフをする気力さえ失ってしまった人がかなりいる」(55ページ)と述べておられます。それほど、ホーガン先生のダウンスウィングは難しいのですね。陳先生といえば伝説のダウンブロー、切れ味鋭いアイアンショットが芸術的なプレーヤーであったとのことですが(ダウンブローという用語は今でもよく使われますが、陳先生が使い始めた用語だそうです)、陳先生はホーガン先生に心酔していたご様子で、常人離れした必死の努力でホーガン先生のショットを会得したようです。先の著書の中でも「なおよく外国選手から『君のスイングはホーガンに似ている』といわれる。私自身もホーガンから多くのものを学ぶように心がけている」(17ページ)、「私のダウン・スイングのコツはホーガンと同じだ」(55ページ)との記述がありますし、他にも随所にホーガン先生のスイングについて言及されています。陳先生、本当に心からホーガン先生を尊敬しておられたのでしょうね。

 難しい本ですが、ものすごく面白く、時間を忘れて一気に読みました。今でもよく読み直しています。私としては、「力の限りボールを叩く」という表現や、その他の記述などから「M系」と理解しているのですが、「ダウンスウィングは、腰を回すことから始まる」「腕は自然と下に降りてくる」などの表現から、「A系」の要素も多分にあると思います。


ベン・ホーガン パワー・ゴルフ: 完璧なスウィングの秘訣はここにある 

 ②は、よく知られた名著である①に比べると少しマニアックですが、ホーガン先生のスイングのポイントがイラスト付きで説明されています(この手描きのイラストが、また味があっていい雰囲気なんです)。本書ではスイング論に関する記述はやや少なめで、その代わり、より実戦的なノウハウが豊富に詰め込まれています。アイアンショット、バンカーショット、パッティングについてはもちろん、傾斜地からのショット、雨や風の中でのプレーなどについても実践的な記述があります。その意味では、①を「理論編」とすれば、本書は「実戦編」と言えると思います。内容的には①よりも断然ハイレベルだと思うので、私のレベルではどうにもならないことも多く、実は・・・それほど読んでいないんです。ごめんなさい(笑)

 なお、下記で在りし日のホーガン先生のスウィングを見ることができます。


神ベン・ホーガン(Ben Hogan)ゴルフスイングの真髄!永久保存の貴重映像

 
 カッコいいなあ・・・