72を切りたい!ゴルフを愛するアマチュア中年オヤジの「ゴルフ本」レビュー

~ゴルフレッスン本の感想、ゴルフあれこれ、その他いろいろ。気の向くままに~

藤田智美プロ

藤田智美プロ <M系> オススメ度:★★

 

チャーミングゴルフ ビギナー編 (発行:ブックマン社 発売:朝日出版社 1981年)

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 藤田(金谷)智美先生は、1980年プロテスト合格、現在でもLPGA(日本女子プロゴルフ協会)の会員で、会員区分は「プロフェッショナル会員」です。

 

https://www.lpga.or.jp/members/info/1000171

 

 1985年に智美先生が師事していたプロゴルファー、金谷多一郎プロとご結婚され、現在ではご夫婦で主にティーチング活動に精力的に従事されているそうです。金谷多一郎プロは、今でもツアー中継などでラウンド解説などのお仕事をしておられますし、雑誌の記事などでも、けっこうお見かけする機会が多いです。

 

 智美先生は、ツアーの世界ではほとんど実績を残すことができなかったようですが、健康的で華やかなルックスから、当時のファンの間では人気があったようで、「アイドル・ゴルファー」(私はこの類の表現はあまり好きではないのですが……笑)の先駆け的な存在でもあったようです。

 

 プロになられたのが1980年で、その翌年、1981年にはいきなり「藤田智美」のお名前で本を出しておられるのですから、当時の人気のほどがうかがえます。

 

 本書は実家の父の本棚に眠っていたのを、勝手に拝借してきたものです。なぜか智美先生のサインが入っており、父がどういう経緯で本書を手に入れたのかは不明ですが、当時、家庭を完全に放棄して毎週末ゴルフに熱中していた父が、おそらくプロアマか、知人の紹介か何かで手に入れたのではないでしょうか。

 

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 レッスン本好きの私はじっくりと各項目を読みましたが、ウッドはパーシモン、アイアンは3番からという時代の本ですから、現代のスタンダードからすれば少し外れる記述も多いものの、読んでいて楽しい本です。

 

 「スイングの練習は、まず5番アイアンから」(54ページ)という項目があり、当時はレディースのビギナーの方でも、最初は「5I」から打っていたことがわかり、時代を感じます。現代なら、7I~9Iが推奨されるでしょうから(笑)。「刻印の違いだけで、昔の5番が今の6番、7番」ということはわかっていても、レディースのビギナーの方が5Iでスイングを作っていたというのは、なんか楽しいです。

 ウッドショットも、パーシモン・ウッドですからね。読んでいて楽しいです。

 

 レッスン内容は、「チャーミング・ゴルフ」というかわいらしいタイトルとは裏腹に、かなり本格的です。というより、相当なレベルのことが書かれています。

 

 「ビギナーのスイングでしばしば目につくのは、クラブをかつぐようにテイク・バックして手先だけでちょんとボールを打つくせです」「ボールは手でなく、からだの回転運動で打つものです」(「いいスイングは、左肩の回転から生まれる。」90ページ)。

 「ゴルフは、腰の回転で打つものだとよくいわれます。…バック・スイングの主なねらいは、右に回転させた腰がもとの位置に戻る力を利用して、ダウン・スイングのとき、クラブ・ヘッドによりスピードをつけてやることにあります。」(「腰の回転運動は、右ひざと左足かかとがポイント」98ページ)

 

 これらは、あの伝説の巨匠・ベン・ホーガン先生「ダウンスイングは、腰の回転から始まる」と断言しているとおりで、このような考え方が当時のスタンダードであったことがうかがえます。また、「(左)肩の回転」を重要ポイントとするのは、あの陳清波先生の教えのままですし、そう考えますと、1980年代初頭というのは、まさにホーガン先生の「モダン・ゴルフ」、陳先生の「近代ゴルフ」という日米の名著に記述されているスイング論が、通説として機能している時代だったのだと思います。

 

 「フォロー・スルーが大きいほど、飛距離は伸びる」という記述もあり(106ページ)、フォロースルーを大きく伸び伸びと取るべきことは陳先生も相当重視されていますし、やはりこの時代は男子・女子を問わず、ホーガン先生や陳先生の理論が支配的だったことを感じさせてくれます。

 

 現代のアマチュアゴルファーが読んでも、大変勉強になる一冊ですが、現代における本書の価値は、本ブログの本旨からは少し外れますが、「80’sへのノスタルジー」にあると思います(笑)。

 

 手描きのイラスト、今となっては古い写植体の本文など、「当時の本とか雑誌って、こんなんだったよなぁ……」という懐かしさを感じさせてくれる本で、レッスン内容以外のところで楽しい気分になれる本です(笑)

 

 

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(出典:38~39ページ。1975年生まれの私にも、何となく記憶があります。当時の本って、こんな感じでした。)

 

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(出典:42~43ページ。私は女性のファッションには疎い方ですが、そういう時代だったんだということくらいは、わかります笑)

 

 こういうのが、時代を感じて、とても楽しいのですね。

 

 ほかには、「”フェアウェイの花”をつとめるのが、女性ゴルファーのつとめ」(30ページ)という記述もあり、これはちょっと現代の感覚からすると問題があるんじゃないかな……という記述もあるのですが、1980年代初頭というのは、そういう時代だったと、ある意味社会学的見地」からも、本書を読んでいると、とても興味深い点でいっぱいです。

 

 本書が今でも手に入るのかと思い、Amazonさんで検索してみたところ、「中古品」でけっこう出品されているようですが、7,000円くらいの値がつけられているのもあって、ちょっとビックリしました。「それなら、直筆サイン入りのこの本は、20,000円くらいで売れるのかな?」なんて、ちょっと思ってしまいましたからね(笑)。

 

 もっとも、売る気はまったくありません。不仲に終わった父の、形見のようなものですからね……(苦笑)。

 

 こういう古い本を探すのも、「レッスン本マニア」の醍醐味です。

 

 今回は、ちょっと変化球的な一冊のご紹介となりました。

 

 遠い昔のゴルフ・シーンに、想いをはせてみるのも、たまには悪くないと思います。